公開日:2007年11月15日

佐内正史 part2 -写真集『Chair Album』より

佐内正史の代表的な写真集『生きている』『Chair Album』の魅力について2回にわたりお送りします。今回は『Chair Album』についてです。

@Gallery TAGBOAT 提供記事

このサイトを見ている方なら、アートを見に行く機会は多いと思う。しかし、実際に買って楽しむ機会はまだまだ身近になっていないのではないだろうか。この特集コーナーでは、国内最大級のオンラインショップである@Gallery TAGBOATより、実際にアートを買って楽しんでいる人の姿や、話題となっている作家やギャラリーを紹介していく。

佐内正史「Chair Album」より 《chair s1》
佐内正史「Chair Album」より 《chair s1》
『Chair Album』と名づけられた佐内正史の白黒写真の写真集がある。佐内はカラー写真でよく知られていて、モノクロの写真集というのはこれしかない、貴重な一冊だ。

これは旅のような写真集である。もっとも、どこかの田舎で撮った風景もあれば、東京の街中、見慣れた風景もある。ただページをぱらぱらめくっていくときの感じが、ずっと続いていく日常を綴ったロードムービーのようなのだ。

しかしまた、写真集をめくっていて、なぜか、以前TAGBOATのコラムでインタビューをして記事にした、写真を趣味になさっている医師の先生のことが思い出された。

先生は、趣味が高じて旅先での何気ないスナップをまとめた写真集を自ら出版なさった。忙しい医者の仕事のかたわら、旅先で写真を撮るのが好きで、ということだったが、素直にその場所その風景に感動したという気持ちが伝わってくる、素朴でいい写真だったのを覚えている。

佐内正史「Chair Album」より 《chair s4》
佐内正史「Chair Album」より 《chair s4》
誤解を恐れずに言うなら、佐内正史の写真と、先生の趣味の写真は地続きにあるような気がする。もちろんプロとアマ、全然違う。しかし本来の写真を撮る意味――ただ感じたことを撮るという点において共通しているし、佐内さんの写真はとてもシンプルなんだと思う。
だから写真を撮ったり、見たりするのが好きな人には何かしら彼の写真は感じてもらうことができるのではないかと思うのだ。
(逆に言うなら、最近はあれこれ理屈をつけるなり、細工をして写真のクオリティをあげようとするアート写真が多すぎるとも言えるのかもしれない)

この『Chair Album』は分厚い写真集で一ページに1枚の写真、それが240ページある。 しかし不思議と飽きない。またいつか、この分厚い本をしばらくぶりに引っ張り出して眺めたとして、やはりきっと変わらず眺められるだろう。

悪く言えば、佐内正史の写真というのは地味である。
でも、ただのいい風景が撮れているというのが実は一番長く見続けられる写真じゃないだろうか。

この写真集を見終えて、そんなことを思った。


Yohei Yasuda 安田洋平

地図好き。ブラジル音楽好き。アート好き。
仕事は編集者。ライター。アートと、福祉と、不動産に関わった仕事をしています。
アートに関しては、
僕の書いた記事がきっかけのひとつとなって、お気に入りのアート作品を持つ人が増えてくれたら幸せです。

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