ウクライナ国旗の青と黄をあしらったICOMホームページ(2022年3月4日現在)
2月24日に始まったウクライナ侵攻以降、美術界からもさまざまな反応が示されている。主だったものを紹介したい。
ICOM(国際博物館協議会)は、ロシアによる侵攻が始まったまさに2月24日、ホームページ上で「ロシアによるウクライナへの侵攻に関する声明」を掲載。ロシア連邦軍によるウクライナの領土および主権侵害を非難するとともに、「武力紛争の際の文化財の保護に関する条約」(1954年ハーグ条約)に基づいて、遺産保護のための国際的な法的義務を順守するよう訴えた。現在、ICOM日本委員会ホームページでは、日本語訳された声明閲覧できる。

モスクワ・ゴーリキー公園内にあるガレージ現代美術館では、2月26日付で同館ホームページ上で「ウクライナで繰り広げられる人的・政治的悲劇が収まるまで、進行中の展覧会作業を中止する」と表明。開催が予定されていたアンネ・イムホフ(Anne Imhof)、ヘレン・マーティン(Helen Marten)、サオダット・イスマイロワ(Saodat Ismailova)の個展、2008年に没したリディア・マステルコヴァ(Lydia Masterkova)の回顧展開催が延期された。

日本からの反応としては、森美術館で開催中のChim↑Pom展「ハッピースプリング」がある。2月26日夕方、「美術館内に道を出現させる」というコンセプトのもと会場内に設えられたアスファルトの道路上で、バングラデシュにルーツを持つモデル・文筆家のシャラ ラジマがウクライナ侵攻の終結を祈るパフォーマンスを実施した。
この道のインスタレーションでは、今後も様々なゲストを招きイベントやハプニングを行い、場を「育てていく」予定とのこと。「#道を育てる」のハッシュタグで、SNS上でその様子を追うことができる。
森美術館で開催中の@chimpomworks のハッピースプリング展の「道」のコーナーにて、祈りのパフォーマンスをします。18時ごろから始めておりますので、居合せた方は一緒に、ウクライナの戦争が早く終息するよう、それぞれがそれぞれの言語で、それぞれの方法で、お祈りしましょう。#道を育てる
— シャララジマ (@lalazima_) February 26, 2022
ウクライナに向かって祈っている。
— 手塚マキ (@smappatekka) February 26, 2022
私も祈る。#チンポム展 #道を育てる pic.twitter.com/02Fh221AtE
パリ・オペラ座地区にあるグレヴァン美術館はパリ最古の蝋人形ミュージアムだが、同館に展示されていたプーチン大統領人形が撤去されたと『euronews.culture』が3月3日に報じた。
記事によると、侵攻開始後の週末、ウクライナに抗議する来館者によって人形が破損。美術館側はプーチン人形を撤去し、追ってウクライナ大統領であるゼレンスキーの像に交換する予定であるという。イヴ・デルオモー館長によると、進行中の歴史的事件を受けて展示内容を変更するのは同館にとって初めて。「グレヴァン美術館では、ヒトラーのような独裁者を表象したことはない。今日の状況においても、プーチンを表象したいとは思いません」と語っている。
プーチン大統領の庇護のもと、拡大してきたロシアの新興財閥資本家を指す「オリガルヒ」。その一人である、インターロス・グループ総帥で、エリツィン大統領時代には第一副首相も務めたウラジーミル・ポターニンが、グッゲンハイム美術館の評議員を辞任した。
辞任理由は明らかになっていないが、同館は声明で「ウラジーミル・ポターニンは評議員会に対して直ちに評議員を辞任することを通知した。グッゲンハイムはこの決定を受け入れ、ポターニン氏の美術館への貢献と展示、保存、教育プログラムへの支援に感謝する」と述べ、「グッゲンハイムはウクライナの政府と国民に対するロシアの侵略といわれのない戦争を強く非難する」と付言している。
2001年にソロモン・R・グッゲンハイム財団評議員となったポターニンは、ポンピドゥー・センターへの美術品寄贈後の2007年にフランスの最高勲章であるレジオンドヌール勲章を受賞、またワシントンDCのケネディ・センターにも500万ドルを寄付するなど、世界の芸術文化に多額の資金を提供してきた人物だ。折りしも、3月1日に行われた一般教書演説でバイデン米大統領がオリガルヒへの調査・追及を明言した直後の辞任発表ということもあり、憶測を呼ぶだろう。
サンクトペテルブルグの国立エルミタージュ美術館と提携し、同館のコレクションを数多く展示してきたエルミタージュ・アムステルダムが、ロシア本館との協力関係を解消すると発表した。
過去30年間にわたってロシアとの協力関係を維持しつつ、近年はプーチンの政治姿勢に距離を置いてきた同館は、ウクライナ侵攻を受けて、この距離を保つことが不可能と判断。運営委員会とディレクター陣が今回の決定を下したという。
現在開催中の「ロシア・アヴァンギャルド|芸術の革命」展は、当面の間、休止するという。
